ミステリーゾーン

この冬の寒い中、季節外れの怪談でも。

とある旅先でのお話です・・・

先日、ある研修で香川県の屋島に行ってきたんですが、
屋島というのは溶岩台地である瀬戸内海国立公園の中心地にある地で、
その山上にある旅館で六日間の研修ということで、
我々は車を走らせて向かってたんです・・・

車で行けない距離ではないですが、なにぶん遠距離なもんで、
疲れるな～しんどいな～と思いながらハンドルを握っていたのを覚えています・・・

そうこうしながら、屋島ドライブウエイという直線の
下り坂に差し掛かった頃、私は何だか、妙な感じがしたんですよ・・・

何の変哲も無い下り坂なんですが、その妙な感じが気に
かかったので、そそくさと通り過ぎようと無意識の内に
アクセルに力を込めていました・・・

すると・・・

何やら車の調子がおかしい気がするんです・・・

下り坂なのに普通にアクセルを踏んでいても、思うほどスピードが出ないんですよ・・・

あれェ～・・・何だろな～おかしいな～なんて言いながら、
そのままグ～ッグ～ッっとアクセルを踏みつけるんですが、
どうも調子がおかしいので、いったん路肩に車を停めて
みることにしたんです・・・

ですが・・・やはりどこにもおかしそうなところは見受けられず、
エンジンも普通に回転している様子でした・・・

なんだ気のせいか、長距離走行だから車も疲れるよな、
としばらく停止した後再発進しようとブレーキから足を放したら・・・

ズ　ズ　ズ　ズ　・　・　・　　ズ　ズ　ズ　ズ　・　・　・

何か車が後ろ向きに進んだような気が・・・

下り坂なのに後ろ向きになんてそんな事あるはずが無いな～なんて思ってると・・・

ズ　ズ　ズ　ズ　・　・　・　　ズ　ズ　ズ　ズ　・　・　・

やっぱり・・・

後　　ろ　　向　　き　　に　　進　　ん　　で　　る　　ん　　で　　す　　よ

うわァーー！！なんだコレ！？！？どうしたんだ！？！？
焦りながらブレーキを踏んで停止させ前を見てみると今まで通りの下り坂・・・
ブレーキを放してみると後ろに引きずられるように

ズ　ズ　ズ　ズ　・　・　・　　ズ　ズ　ズ　ズ　・　・　・

うわァーー！！何だここ！！出るのか！？やばいやばい！！

慌ててシフトをドライブに入れ、ガァーーーーッ！！っと走りだしたんです！！

やっぱり何だか重たい感じだ！！

とにかくここから離れないと！！

振り返っちゃいけない！！

振り返ったら無数の手が車を・・・ッ！！

ともう無我夢中で・・・

数分後・・・
車の調子もいつの間にか元に戻り、
それ以後は何の異変も違和感も無く無事に目的地にたどり着きました・・・

あれは一体何だったんだろう・・・

海沿いの道だったので岸壁から転落死した人の自縛霊が
事故現場を通り過ぎた車を引き戻そうとしたんだろうか・・・

それとも岸壁から飛び降り自殺した人の霊が
寂しくて誰かを引きずり込もうとしたんだろうか・・・

色々な憶測が頭をよぎりましたが、
そんなこともすっかり忘れ帰りの道中で再びその道を通った時、
とある奇妙な立て札を見て全てが明らかになったんです・・・

｢ミステリーゾーン　上ってる　下ってる？｣

その下り坂・・・

実は・・・

上　　　り　　　坂　　　だ　　　っ　　　た　　　ん　　　で　　　す

どうやらその辺りではよく知れた名所らしく、ガイドマップにも写真が載っている程です。
一見下りに見えるその景観は目の錯覚であり、
ドライバーは坂を下っているような視覚の中で坂を上るという
珍しい体験が出来る場所らしいです。

散々引っ張った挙句、ただの上り坂というオチの弱さで申し訳無いですが、
景色も素晴らしい所ですし皆さんも一度訪れてみてはいかがでしょう・・・

中にはアクセルを離していても坂を下っているように上ってしまう方も
い　　る　　か　　も　　し　　れ　　ま　　せ　　ん　　よ　　・　　・　　・

※この話は長岡専務の体験談を元に私が想像で書いたものですので、
多少の・・・結構なフィクションを含みます。